芝居があるから、頑張れる

福士晴彦・菅野崇・小野寺養修(第9回公演『腕呼争場』特設サイトより転載/2009.4.29収録)

大学時代のニックネームで、今でも呼ばれてます

まずは、自己紹介をお願いします。

福士晴彦 【福士】 十割カツオ役、福士晴彦(ふくしはるひこ)です。
えーと、今年で33になります。9月24日生まれ、てんびん座のO型です。趣味は芝居とスキーです。
岩手大学劇団かっぱ出身です。
劇団かっぱには、サークルネームという、あだ名みたいなものをつけられる習慣がありまして、俺はそこで『ばん』というサークルネームが付き、それが定着して今にも至っています。
…思うに、2文字だと呼びやすいんだろうね。だからそのまま今まで残ってるんだと思う。だから当時、菅野くんにもサークルネームはあったんだけど…

【菅野】 いいよ、それは蒸し返さなくても(笑)

【福士】 でも菅野くんのは、残らなかったんだな。
ちなみに遠藤は、当時、オ○ムの○祐さんに似てたんで、『上○くん』と呼ばれてました。

どうして『ばん』というサークルネームになったんですか?

【福士】 えっと、大学に入学してすぐのサークルオリエンテーションの時に、劇団かっぱの教室に行ったら、先輩たちが俺んとこに来て「高校までは何部だったの?」みたいな話になってさ。
「野球やってました」って言ったら、「俺も野球やってたよ」って先輩が言って。「どこの球団が好きなの」って話になったんだけど、先輩たちは広島と中日が好きで、俺は阪神ファンだったんだよね。それで俺、「巨人は好きじゃないです」って言ったんだ、アンチ巨人だから。そしたら先輩たちが「あー俺も!」って言って。
で、その先輩たちは当時、『侍ジャイアンツ』のビデオを借りて、見てたらしいんだけど…。

【小野寺】 侍ジャイアンツ?

【福士】 うん、『侍ジャイアンツ』っていうマンガがあるんだよ。そのなかに、番場蛮(ばんばばん)っていう人が出てくるんだけど、番場蛮も巨人が嫌いなの。で、彼は大洋(現ベイスターズ)に入りたかったんだけど、なぜか巨人に入って、んで巨人を中から壊していこうっていう…(笑)。
で、まぁ、アンチ巨人だし、なんとなく似てる雰囲気があるから、じゃあサークルネームは『ばん』だねって。かっぱに入った時点でいきなり決まったの。

【小野寺】 ブログで連載中の『俺と芝居』にも繋がる内容ですね。

【福士】 うん、ブログのほうに「詳しくは対談のほうで…」って書いたので。
そういうふうなかんじで、番場蛮の『ばん』です。『番場』の『ばん』なのか『蛮』の『ばん』なのかはわかりませんが。
以上です!

菅野崇 【菅野】 じゃあ、次は俺の自己紹介を。
米山ルチン役、菅野崇(かんのたかし)です。
ばんくんと一緒の32歳。1977年1月3日生まれ。山羊座のO型です。
趣味は芝居と…ゲーム?…ガンダム?(笑)そんなかんじです。
で、ばんくんと同じく劇団かっぱのOBです。

【小野寺】 昔のサークルネームは何ですか?

【菅野】 昔のサークルネーム?(若干動揺している様子)
えっと、あの…『なみへい』、『うえーぶ』(笑)。まぁ、由来はいいっす。

【福士】 由来言わないと!

【菅野】 んー…たいした由来じゃないんですが、当時バイトしてた場所が『ア○リカンウエーブ』というレンタルビデオショップだったんです。ただ単にそれだけです。

【小野寺】 『WAVE(波)』から『なみへい』なわけですね。

【福士】 安易だよね、名づけ方がさ。あの時の先輩たち、「その名前が後々残るかも」とか、そういうこと一切考えてなかったもん。

【菅野】 まぁ、残らなくて良かったです。

【小野寺】 残ってる人も、TCTには数人いますけどね。ばんさんの他にも。
(高崎美絵=しんべえ 等)

【菅野】 では、同じく劇団かっぱ出身のデラくんの自己紹介を。

小野寺養修 【小野寺】 稲庭鈍汰役、小野寺養修(おのでらよしひさ)です。
昭和58年8月25日生まれのO型、乙女座でございます。
趣味は、芝居と、音楽を聴くことと、酒です。酒は僕の生きがいです!
以上です。

ちなみにデラくんは、どうして『デラ』って呼ばれてるんですか?

【小野寺】 えっと、大学に入学して、かっぱに入って、そこから1〜2ヶ月経過したときに、「小野寺って言いづらいから『デラ』でいい?」って言われて。それからずっと『デラ』ですねぇ。

【菅野】 でも、言いやすいよね『デラ』って。やっぱり、2文字っていうのはけっこうポイントなんだよね。

だから『ウェーブ』は残らなかったんですかね。

【小野寺】 『なみ』だけだったら残ったかも。

【福士】 それもちょっとね。

【小野寺】 「なみさん!なみさん!」って皆に言われたりして。

【菅野】 女の子みたい(笑)

いろいろ大変だけど、芝居があるから日常生活も頑張れるんだと思う

さて、自己紹介も終わったところで、皆さんの芝居歴について聞いていきたいのですが。

【福士】 俺とカンノは、19歳の頃からやってるから…14年目?

【菅野】 うん。

福士晴彦 【福士】 でも、実は俺、かっぱの卒業公演が終わったら芝居はもう一切やめようと思ってたの。
その時の俺にとって、芝居は部活と同じような感覚だったから、職に就いたらもう芝居はおしまい、本職のほうだけ頑張ろうと思ってた。だからその分、卒業公演に「これでもか!」っていうほどチカラを入れたのね。最後だから頑張ろうって。
本当に、その後も芝居を趣味として続けていくなんてことは考えもしなかった。
だから、TCTを旗揚げするってなったときの、その核となるメンバーの中には、俺、入ってないんだ。

【小野寺】 え?そうなんですか!?

【菅野】 そうだったねー。

【福士】 TCTっていう名前を決める段階の時には、いたんだけどね。でも旗揚げを決める段階の時には、いなかった。
だってやりたくなかったもん(笑)

【菅野】 そもそも、仕事の関係で、盛岡にいなかったしね。

【福士】 うん、一関(岩手県の県南部)にいた。

【小野寺】 じゃあ、旗揚げの核となるメンバーって、遠藤さんと…。

【福士】 遠藤(遠藤雄史)と、菅野くん(菅野崇)と、布田(布田智章)と、しんべえ(高崎美絵)かな。

【菅野】 うん、そうだね。大学を卒業してからも呑んだりする機会がちょくちょくあって、その中でだんだん出てきた話だったと思う。

【福士】 だから、いちばん思い入れが強いのは、布田とか遠藤とかしんべえだと思うよ。

あれ?菅野さんの名前が出てきませんね?

【小野寺】 菅野さんは、どうやらその件についてすごくドライだったという噂を聞いたことがありますよ。

そういえば、私もそう聞いたことがあります。で、布田さんが泣いて説得したっていう噂を…。

【菅野】 誰から聞いたの(笑)

【福士】 っていうかそれに限らず、布田はしょっちゅう泣いてるよ(笑)。泣き虫だからさ、アイツ。

【菅野】 彼の涙はけっこうすぐ出る涙だから。

【小野寺】 でも俺、泣いてるの見たことないですよ。

【菅野】 お酒飲んだら大概泣くよ。

【福士】 基本的にさ、彼、いい奴なんだよ(笑)。だから、ちょっと意地悪なこと言うと「そんなこと言うなよぉ〜」って泣く。

【菅野】 最近はないけど、若いときは…それこそ今のデラと同じ年代の頃は、すぐ泣いてた。

【福士】 そんなわけで、どっちかというと俺は旗揚げに対して後ろ向きというか。「一緒にやろうぜ」って言われて、「んー」と思ったんだけど、まぁ、いいかなって。

【菅野】 でも、そんなもんでしょ、最初のきっかけって。

【小野寺】 そんなもんですよね。

【福士】 でも、実際こうやって入団して、すごい楽しい思いしてるから、結果的にはよかったな。いろいろ大変だとは毎度毎度思うけれども、芝居があるから日常生活も頑張れるんだと思う。
それこそ学生のときは「仕事しながら芝居してる人ってどうなんだろうな」と思ってたけど、それがだんだん分かるようになってきたかな。

【菅野】 俺も、ものすごい思い入れがあって旗揚げした感じではないんだよね。社会人になって、真面目に仕事をするようになったけど、なんとなく物足りないって思って…。で、勢いみたいな感じで。

【福士】 デラくんはなんで芝居やりはじめたの?

小野寺養修 【小野寺】 俺は高校時代から観てたんです、盛岡の演劇を。いろんな劇団さんの芝居を観てまわってて。
で、大学入ったときに、「俺もやってみたいな」って思ったんです。
それで、どの劇団に入ろうかって思ってたときに、大学のサークルオリエンテーションで劇団かっぱを知ったんです。
でも、「どんな芝居をやってるのかがわからないままに入団するのはちょっとなぁ…」って思いがあったから、先輩からこれまで上演した作品の脚本を借りて読んでみたら、1本面白いのがあったんですよね。
…で、そこまで至ったときに、「これで入らなかったらけっこう嫌な奴だな」ってふと思って。
そんな小心者的な理由なんです、すみません。

【菅野】 大学に入る前から芝居を観ていたっていう、そのきっかけは何なの?

【小野寺】 もともと母親が一生懸命観てて、それで「見に行かない?」って誘われて。
で、『神無月の冥王』っていう芝居を見たときに、演劇にも、ただ見るだけじゃなく、「アグレッシブに見る」っていう考え方があるんだなっていうことに気づいて。
そのときに、芝居を観るっておもしろいんだなぁって思ったんです。

【福士】 かっぱに所属してる時に、TCTに入団したんだっけ?

【小野寺】 そうですね、先輩に誘われて。『宣戦布告』(第3回公演・2002年10月)から参加してます。だから、TCTの芝居を観るより先に、TCTに参加してしまった、っていう…。

【福士】 じゃあ、俺たちの旗揚げ公演とかは見てないの?

【小野寺】 すみません、見てないんです。
でも、当時のことは覚えてますよ。旗揚げ公演のチラシ、山ほど撒いてたじゃないですか、あちこちに。あれは忘れられませんね。すげぇなって思った。
ただ…その当時も母親と一緒に芝居を見に行ってたんですけど、そういう人間にとって「恋人とふらっと見にこれる芝居」っていうTCTのキャッチコピーはちょっと…ね。
頭の中に浮かんだのが、恋人たちがいっぱいいる中で、俺だけ母親と一緒に芝居を観てるっていう図で。「やべーよな、これ」って。

【菅野】 うちらのキャッチコピーがアダとなったんだね(笑)

【小野寺】 ちょっと心が折れました(笑)

俺の人生の中であのときが一番、ひとつの物事に全力投球してた時期だった

さて、お三方は、TCTの公演だけではなく、他劇団の公演や企画公演などでも精力的に活動されていますよね。

【福士】 デラは、最近けっこう他劇団でも役者やったりしてるよね。なんか、年がら年中どこかに出てるイメージがある(笑)

【小野寺】 いや、最近はそうでもないですよ。
一昨年とか一昨々年は、TCTだけじゃなくいろいろ外部の公演にも参加させていただきましたけど、去年は『小津の國の妖術師』(TCT第8回公演・2008年10月)だけですし。

【福士】 他劇団に参加してみて、TCTに戻ってきたときに、TCTのいいところとか感じたりする?

【小野寺】 感じますね。自分にとってのメリットっていうか…俺が成長するためには、TCTにいるのが一番いいなって思います。居心地がいいから、面白いからっていうのもありますけど。
そして、こういう人間を置いてくれる遠藤さんの器の大きさがね(笑)。普通は置いておけないでしょ、こんなヘンテコな人間。

【福士】 菅野くんは?この前、八芝(もりげき八時の芝居小屋)にも出てたりしたじゃん。

【菅野】 そうだね。でも、だからといって、例えば「今からTCTやめて他の劇団に…」ってのは全く思い浮かばないなぁ。

【小野寺】 もっと他の劇団に客演として行ってみたいっていう思いはありますか?

【菅野】 もちろん!客演としては、いろいろ出てみたい。でも、やっぱり、最終的に帰ってくるところはここだ、って思う。

【福士】 俺、また、香活(香港活劇姉妹:盛岡で活動中のアマチュア劇団)さんに出たい!…っていうか、香活以外から客演依頼の声がかかったことない!!(笑)

【小野寺】 なんでだろ、普通に声かかりそうですけどね。

【福士】 扱いづらいんじゃない?(笑)「あいつ、声張ってただ暴れるしかできないんじゃねーか?」って思われてるんじゃないかと…。
でも、もし声をかけてもらえるなら、できるだけやってみたいなって思う。

【菅野】 俺もそう思うなー。

福士晴彦 【福士】 にしても、どこの劇団の人たちも、普段は普通に仕事しながら芝居をやってるわけじゃん。それってすごく難しいことなのに、凄いなって思うよ、本当。それはうちの劇団にしたって同様なわけだけど。
遠藤が、毎日忙しい中で、それでも新作の脚本を書き続けてて…ほんとうに凄いと思ってる。
でもさ、なんかどんどんどんどん書いてるから、「大丈夫か?」と思って。「もしや今がピークか?」と(笑)。遠藤の勢いに負けないように、俺らも頑張らないとね。

では、TCTのこれまでの公演の中で、いちばん印象に残っている公演と、そのときのエピソードを。

【福士】 俺はもちろん、旗揚げ公演『躯』(2001年8月)ですね。あの時はほんとに頑張りました。酒飲まなかったもん。1ヶ月。

【小野寺】 それは、願をかけて?

【福士】 いや、痩せようと思って(笑)。俺あのとき54キロだったの。

【小野寺】 今は?

【福士】 今は、ろくじゅう…さん?(笑)

【小野寺】 菅野さんは?

【菅野】 58キロ。

【小野寺】 俺57キロ。

【福士】 なんで体重の話になってんの(笑)
まぁ、あとは、芝居のために、人生初で髪を染めたりとかね。社会人にも関わらず。

【菅野】 俺もやっぱり、旗揚げ公演『躯』かな。
当時って、芝居をやることがすごく大変だったんだよね。かっぱの時の経験はあっても、劇団として芝居を打った経験はないわけじゃないですか。だからなにもかも手探りで。
菅野崇 たとえば制作の仕事にしてもそう。今じゃ当たり前にこうやって稽古場を借りてるけど、旗揚げ当時はそうもいかなかった。いろんなところ…それこそあちこちの公民館とかに頭下げて、場所借りてましたから。
役者としても、いろいろと苦労しました。今だったら、遠藤の書く脚本の中で、自分にあてられるキャラがどういう人かっていうのはだいたいわかるんだけど、当時はまだそこまでじゃなかったから、役作りだけでもすごく苦労した覚えがあります。
思い返すと、俺の人生の中であのときが一番、ひとつの物事に全力投球してた時期だったなって思いますね。

【小野寺】 俺は第3回公演『宣戦布告』(2002年10月)ですね。はじめてTCTに関わった作品でもあるし。
すごい勢いのある空間だったなって思う。舞台上は勿論だけど、稽古場の雰囲気も。
今まで長いこといろんな芝居を見てきて、たまーに、そのときと同じようないい勢いのある作品に出会うことがあるけど、その感覚を初めて感じたのが『宣戦布告』でした。

【菅野】 周囲からも高く評価された公演だったしね。

【福士】 そういうふうな勢いとか面白さ、バカバカしさっていうのは今回にも通じてると思う。
だから、『宣戦布告』が好きだって人には、今回の『腕呼争場』もぜひ観てほしいです。きっと楽しんでもらえると思います。

役者として出てない皆の気持ちも受けて、俺たちは舞台に立つんです

先日、遠藤さんのインタビューを収録した際に、「役者の皆さんにそれぞれ願うこと」というのを伺ったんですが…皆さん、ご覧になりましたか?

【福士】 俺に対しては『爽やかさ』ってことなんだけどさ…それって、あの場面?(笑)
俺さ、十割カツオっていうキャラクター対して「爽やかだ」と思ったことは1回もないんだけど。
だから遠藤のインタビュー読んだときに「ふざけてんのか!?」と思って(笑)。
「じゃああの場面に俺はすべてをかければいいのか?」と思ったりもする…。

【小野寺】 ここから先、なにかあるのかもしれないですよ。爽やかな出来事が。
(※この時点では脚本がまだ全て完成していませんでした)

【菅野】 俺は『イケメン具合』ってことで。
実は俺も、遠藤のインタビュー読んだとき、「え!?」と思って。
「あのキャラクター(米山ルチン)のイケメン具合って、どういうこっちゃ?」と。

【福士】 菅野くんの役はさ、かっこいいバカなんじゃないの?

【菅野】 『アホかっこいい』みたいな、そういうジャンルを作れればいいかと思って。

【小野寺】 どういう方向に進んでいってもカッコよさを失わないって、凄いことですよね…。

【福士】 いや、カッコよさを失わないっていうか、カッコいいよりアホのほうが勝ってるだろ(笑)

【小野寺】 さて、僕は普通に『滑舌』ということで。
ほんと、直さなきゃいけないところなので、直します!
…なんか、俺へのメッセージが、一番迷いがないですよね。『滑舌』って。

では、今回の芝居に対しての思いやエピソードなどを。

【福士】 俺がずっと遠藤に語ってきた、「俺が兄貴分で、デラが弟分っていう芝居がやりたい」っていうのが、今回ついに!

【小野寺】 やっと実現しましたねー。

【福士】 なんかこう、「俺の意思を継いで、お前が…!」みたいなさ。そういうのに憧れてて(笑)。
今回そういう場面があるかどうかはわかりませんが。

【小野寺】 …そういえば俺、これまで芝居の中で菅野さんと絡んだことないんですよね。ばんさんとは、チョコチョコと絡むんだけど。

【福士】 俺と菅野くんもあんまり…。面と向かって、真正面でガッツリ戦うのは初めてかもしれない。

【菅野】 俺の役って、これまでわりと中立というか、どっちつかずの立場が多かったからね。

【福士】 菅野くんはなー、どんな役でもこなせちゃうからなー。いろんな方向に行けるんだよね。

【菅野】 そんなわけで僕も、福士くんとガッツリ戦えて嬉しいです(笑)
それと今回、役者として出られない、スタッフオンリーのTCTメンバーもいるから、その中で選ばれて、役者として舞台に立つっていうのは、やっぱり思うところはありますね。
今までは、けっこうみんな舞台に出してくれてたから、遠藤が。

【福士】 そういう、役者として出てない皆の気持ちも受けて俺たちは舞台に立つわけだから、そこらへんはね、大切にしていこうって。
スタッフがいるからこそ、俺たちは安心して舞台の上で生きられる。だから、常に感謝の気持ちを忘れずにいようと思います。

なるほど。さて、皆さんは役者と並行してスタッフも担当しているわけですが、それぞれ自分のスタッフワークについても聞かせてください。

【福士】 僕は舞台監督装置小道具を担当しています。

舞台監督とは?

【福士】 これはね、各劇団によっても、解釈というか、仕事の幅も違うと思うんだけど…。
大きくは…本当だったら(笑)、各スタッフを束ねて、スタッフのテクニカルなこととかも全部理解した上で、芝居を作っていくっていうか。
演出と舞台監督が両輪になって、ひとつの芝居を作るっていうのかな。
演出と同じぐらい重要なポジションなはずなんです、舞台監督って(笑)

【小野寺】 仕込みがスムーズに行えるようにするのも、舞台監督の仕事ですよね。

【福士】 そう。演出が「こういうふうにしたい」って思い描いたものを形にしていくにあたり、「じゃあこういう音を」「こういう明かりを」「こういう小道具を」っていう各スタッフがいるんだけど、それを舞台監督がまとめて、演出に「こうやろうと思うんだけど」って提案して作っていく…っていうのが本来の舞台監督なんだと思うんだ。
そう思って、かっぱの時にはそれを忠実にやろうと思って、やってきたんだけど…あのね…TCTになってから、正直、さぼってるというか…ごにょごにょ。

【菅野】 だんだん声のトーンが下がってきてる(笑)

では、装置は?

【福士】 装置は、舞台の形を作り上げる仕事。…簡単にいうとパネルを作ったりとか平台を組んだりとか。
何も無い空間に、その芝居の空間を作り出すっていうのが、装置の役割ですね。

【小野寺】 建物建てたりとか。

【福士】 うん、そういうこと。

小道具は?

【福士】 小道具は、役者さんが持つものを用意したり作ったりする仕事です。 これは幸代ちゃん(池田幸代)がほとんど中心になって、今がんばってます。

では菅野さん。

【菅野】 えっと、僕は、制作です。

制作とはどんな仕事ですか?

【菅野】 お芝居を、ちゃんとした『公演』という形にするための仕事、ですかね。

【小野寺】 縁の下の力持ち。

具体的に言うと?

菅野崇 【菅野】 んー、本来であれば(笑)、まず、公演を打つ場所のセッティング、手配とか。それから、お客さんを呼び込むための諸々の宣伝活動とか、公演当日の受付。
あとは、それこそ庶務ですね。仕込みとか本番の日のお弁当頼んだり。本当に色々な、多岐にわたる仕事です。

【小野寺】 よくよく考えるとすごい大事な仕事ですね。

【菅野】 うん。あと、このご時世なんで、やっぱりWEBという強力なツールを使っていこう!というのが今いちばんチカラを入れてるところですね。

では、デラくん。

【小野寺】 はい、音響です。
音響とは…本来は(笑)、舞台上の、耳から聞こえるものすべてを管理するっていう仕事です。客入れの音楽とか、舞台上の音楽、効果音とか。
本来は、反響指数を確かめたりとか、幕があると音が吸われるからとか…そういうところまでいろいろ考えないといけないんです。でもなかなかそこまでできてないんのが現状なんですけどね。

【福士】 デラくんはね、なかなかいい音を持ってくるんですよ。

【小野寺】 ありがとうございます!
今回は役者と並行してやるということで、なかなか音響にガッツリ関われずにいるんですが、同じく音響の布田さん(布田智章)といっぺー(菅野逸平)に思いを託したいと思います。
もちろん、できるだけのことはやっていきたいと思っていますが。

【福士】 にしても、音って凄いよね。
音があることによって、舞台上で、目に見えないものがヒュッと飛んできたりとか、そういう表現ができるわけでしょ。
効果音っていうものは、こういう少年漫画的な芝居を主としているTCTにとっては必要不可欠なもので、それを間違えずに、いいタイミングで入れるって、すごく難しいことなんですよね。
役者の動きをビデオに録って、その大体の流れを見ながら音を入れる練習をするわけでしょ?本当に凄いと思う。

小野寺養修 【小野寺】 そういった意味では、『躯』の再演(第6回公演・2005年8月)で音響オペレータをやった時は、本当にキツかったです。オペの席がステージから遠くて、思うように見えなくて。
盛岡劇場のメインホールで上演したんですが、僕は2階のいちばん前でオペをやってたんですけど…。
役者の動き自体はちゃんと見えるんです。でも、どうやら僕はこれまで、五体の動きっていうより、関節の微妙な動きでタイミングを探って音を入れていたんだな…っていうことにその時気づきましたね。
2階席からじゃ関節の動きなんて全然見えなくて、だからタイミングもつかめなくて。苦労しました。

では、いよいよ最後となりましたが、おひとりずつ意気込みを。

【福士】 6月が本番なので、僕は5月・6月の間に、だんだんと体を作っていこうと思います。

【菅野】 …俺、てっきり、「お酒をやめる」って言うのかと思った。

【小野寺】 俺もそう思いました。

【福士】 そう言っちゃうとやらなきゃダメになるから、そういう表現にしたのに!(笑)
…そんな感じで、意思が弱いところもありますが、5月はお酒を1日1本で終わるようにします!

【菅野】 えっと、俺も、精一杯頑張ります!

米山ルチン風に言うと?

【菅野】 ルチン風に!?あー、えーと……いい英語が出てこない(笑)
『がんばる』って英語でなんていうの?

(“『Do my best!』じゃないですか?”との助け舟が入る)

【菅野】 なるほど…じゃあ……
「精一杯ドゥーマイベストゥッ!」(笑)

【小野寺】 もがき苦しみながらも、自信を持ってお見せできるものを作りたいと思います。見に来てください!

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