自分がどんどんTCTを好きになっていくのがわかる

布田智章・及川貴樹 布田智章・及川貴樹よしき
(第11回公演『Rush! rush! Rush!』第1話『Champ! champ! Champ!』によせて/2010.5.3収録)

※インタビュアー:小笠原尚子    

「自分の人生、まるで何かに導かれるように今ここまで来ているな」という気がする。

【布田】 今回は、及川貴樹くんと僕・布田智章の対談ということで…よろしくお願いします!

【及川】 よろしくお願いします!

【布田】 及川くんは今年入団してきてくれて、今回はじめて芝居をやるんですよね。

【及川】 はい、学芸会でカラスの役をやって以来です。

【布田】 カラス以来かぁ(笑)。

【及川】 台詞は「カァ、カァ」だけでしたけどね(笑)。

【布田】 観劇自体はもともと好きだったんですか?

【及川】 これまでも、けっこう東京や仙台で芝居を観たりしてました。劇団☆新感線とかキャラメルボックスとか。あと、暇なときに下北沢の小劇場に行ったりとかね…小劇場ってけっこう、行くとなにかしら芝居やってたりしますから。

【布田】 なるほど。じゃあ、TCTのことを知ったきっかけは何ですか?

【及川】 ラジオで、公演の宣伝をしてるのを聞いて。

第10回公演『あの角を曲がれば』(2009年11月)の宣伝で出演させていただいた、IBCラジオの『クラブにおじゃま』ですかね?

【及川】 はい、たまたま仕事中に車を運転しながらそのラジオを聞いて、「盛岡にもこういう劇団があるんだな」って思って。それで『あの角を曲がれば』を観に行って、具体的にTCTのことを知った…というかんじです。

【布田】 『あの角を曲がれば』を観る前に、TCTのホームページを見たりとかは?

【及川】 はい、見ました。僕、ラジオを聞いた後に、インターネット予約で『あの角を曲がれば』の前売券を買ったんですよ。その時にTCTのホームページをはじめて見たんですが、その時は、TCTがどういう劇団だとか、これまでどういう芝居をやってきたかとか、そういう深い所まではじっくり見なかったんです。実際に『あの角を曲がれば』を観てからですね、ホームページの中身をじっくり見たのは。

【布田】 なるほど。じゃあ、実際に「TCTで芝居をやってみたい」と思ったきっかけは?

【及川】 『あの角を曲がれば』を観て、いろいろ感じるものがあったんです。で、TCTのホームページを改めてじっくり見たときに、「自分にもできそうかな」っていうと失礼かもしれないけど、「入りやすそうだな」と思いました。ただ、「やってみたい!」っていう気持ちはあっても、本当に自分にできるんだろうかっていう不安はありましたね。「仕事を抱えながらできるんだろうか」とか「ハブられたらどうしよう」とか…(笑)。

【布田】 そんなことしないよ〜(笑)。でも、そうだよね。最初はやっぱりいろいろ不安だよね。

【及川】 不安でしたね〜。年齢もそんなに若くないし、「なにあの人、オッチャンじゃん!」みたいに思われたら、どうなんだろうって。でもホームページを見て、「みんな仕事しながら演劇やってるんだ」とか「自分と同じぐらいの年齢の人もいるんだ」っていうことがわかって、ちょっと安心しました。
ただ、それでも実際に「やってみたい」と思ってから入団希望のメールを送るまでは、けっこう時間がかかったと思います。送ろう、送ろうと思いながら時間が経過していって。で、どうにかこうにかメールを送って、そのあと実際に稽古見学が実現するまでけっこう時間が空いたんです。あれが自分にとっては良かったですね。心の準備期間があったっていうか。

その時はちょうど団員の外部活動が多かった時期で、稽古がしばらくお休みだったんですよね。それで、1ヶ月半ぐらいお待たせしてしまったんです。

【及川】 うん。あの1ヵ月半の待機が、自分にとってはけっこう良かったですね。徐々にこう…気持ちを盛り上げていったというか。

偶然にラジオを聞いて、それがきっかけで芝居を観て、入団を決意してくださった…という一連の流れを聞くと、なんだかすごく「ご縁」とか「めぐり合わせ」みたいなものを感じますね。

【及川】 そうですね。これまで、自分の人生の中で「こういうふうになりたい」とか「こういうことをしよう」って思ったことがあまりないんです。でも、今こうやって生きていることで、いろんなモノや人との出会いがあったりして。「自分の人生が、まるで何かに導かれるように今ここまで来ているな」っていうことをすごく感じたりしてる今日このごろです。

そういう考え方、素敵ですね。

【布田】 大人だぁ。

同い年でしょう(笑)。

【及川】 そもそも、自分が岩手に住むってことも予想してなかったんです。もともと岩手生まれなんだけど、中学のときに千葉に引っ越して、いま実家も千葉にあるし、東京で一人暮らしをしてた時期もあったんです。それで、昔は「自分の子供は純粋な東京っ子として育てたい」っていう夢があったりして、「いつか東京で結婚して、トレンディドラマに出てくるような夫婦になりたい」って思い描いてたのが、なぜか今、こっちに来て介護の仕事を…しかも介護の仕事自体、昔から目指してたというわけではなくて。だから、いろんな出会い、ご縁があるなぁと思いますね。

芝居をすることによって、普段の自分じゃない自分を出してみたい。

【布田】 稽古初参加の日は、どんなかんじでしたか?

【及川】 稽古初日はゲームが中心だったので、あまり緊張することもなく、楽しくやれましたね。

【布田】 いきなり無茶なこと言われることもなく(笑)。

「なんか一発芸しろよ!」とか言われることもなく(笑)。

【及川】 そういうこと言われたらどうしよう!?と思ってましたけど、なかったですね。安心しました(笑)。

【布田】 じゃあ、実際に入団して、本格的に稽古に参加してみて、どうですか?

【及川】 毎日すごく楽しいです。先輩方もみんな優しいですし。

…正直に言っていいんですよ?

【及川】 いやいやいや(笑)。でも、「いろんな人がいるんだなぁ」っていうのは、すごく思いますね。年代も個性もバラバラだし…なんていうのかな、実はシャイな人もいたりするわけじゃないですか。だから、そんなにこう…「前に前に」っていう人だけじゃないんだな、っていうのがわかって。

役者とは、みんな「俺が、俺が!」っていうものだと思ってた、と(笑)。

【及川】 でも、そういうんじゃないんだなー、と(笑)。あと、みんな明るいですよね。それに、すごいフレンドリー。はじめて来たとしても、すんなり入れるっていうか。そういう感じはしますね。
あと、「芝居ってなかなか自分が思うようにはできないもんだな」っていうことを最近すごく思います。頭の中で「こういうふうにやりたい!」っていうのをイメージしてても、実際その場でできなかったりとか、自分のイメージしてる声じゃなかったりとか表情じゃなかったりとか。普段自分が自然にやってるような仕草でも、実際に「やらなきゃ」と思ってやると、うまくいかないな…って。だからね、布田さんとかカンノさんとか、「こういうのやってみて」って演出の遠藤さんに言われて、すぐその通りできるじゃないですか。すごいなーと思って。

【布田】 あははは(笑)。じゃあ、今後芝居を続けていくにあたり、「こういう芝居をやってみたい!」っていうのはありますか?

【及川】 「普段出せない自分を、芝居で出してみたい」っていう思いはありますね。僕はどちらかというと感情表現がすごくヘタクソで、特に怒ったりとか情熱的に喋ったりすることが苦手なんです。そういう感情が自分の中にないわけではなくて、いろんなことを思ってはいるんだけどそれをうまく出せない、出すとすごい変な感じになっちゃうから出さないでおこう…っていう。でも、安直な考えかもしれないけど「芝居をすることによって、普段の自分じゃない自分を出してみたいな」と。

【布田】 うんうん。それって芝居の魅力のひとつだと思います、特に役者やってるとね。

『Champ! champ! Champ!』には、今のTCTの良さがすごく出てる。

さて、そろそろ次回公演のことについて詳しく話をお聞きしましょう。
次回公演『Rush! rush! Rush!』は3部作のオムニバスなんですが、その1本目『Champ! champ! Champ!』という作品について。この作品には布田さんも貴樹さんも役者として出演するわけですが、まず貴樹さんが今回初舞台。そして布田さんも昨年TCTに復帰して、久々に役者として舞台に立つということですが…。

【及川】 『あの角を曲がれば』とは全く違うニュアンスの芝居ですね。

【布田】 初めて観たTCTの芝居が『あの角を曲がれば』だとすれば、『Champ! champ! Champ!』には相当びっくりすると思います。前作と今作のイメージの差に。もし及川くんが入団前に『Champ! champ! Champ!』を観ていたら、果たして入団しようと思ったかどうか(笑)。

【及川】 でも楽しいですけどね。「これがTCTなんだ!」っていうのを、稽古しながら実感しているというか。

今回、布田さんは久々の舞台復帰でありながら、初回からいきなり相当動きますよね。

【布田】 はい…まさかね、腰の悪い僕に、こんな動きをさせるのかと(笑)、昨日の稽古で思いました。

そうなんですよね、昨日の稽古でものすごいハードな演出がついてしまって。

【布田】 第3回公演『宣戦布告』(2002年10月)でドッヂボールをテーマにしたアクション芝居をやって、あの時もものすごい運動量だったけど、今回はそれと同じぐらいハードです。

布田さんは2006年にTCTを一時休業、2009年に復帰なさったわけですが、復帰作『たった一つの願い事』(2009年10月)はリーディング公演だったため、ほとんど動きはなかったんですよね。それが今回、本格的な役者復帰でいきなり…。

【布田】 徐々にじゃなくて、いきなり120%を出せ!っていうことですからね(笑)。

そんな布田さんの、今回の役柄は?

【布田】 イナセな感じの…日本の男、といった感じの役です。明るい感じで、ハイテンションでいければいいかなと。稽古も毎回楽しくやっていけてます。

では、布田さんがこの作品を通して、お客様に伝えたいことは何ですか?

【布田】 …俺もまだまだ動けるよ、と(笑)。 でも、これがまぁ今のTCTの良さというか、そういったものがすごく出てると思うので、これはぜひ見てもらいたいですね。

個人的なみどころは?

【布田】 やっぱり、TCTにしかできないこのバカさ加減ですね。

そうそう、そもそもこの『Champ! champ! Champ!』の元ネタを提供したのは布田さんなんですよね。

【布田】 「次回公演はオムニバスをやる」っていうことはある程度前から決まっていたんだけど、じゃあどういった内容の芝居をやるかっていうことになって、ネタ出しみたいな場を設けたんです。いろんな意見が出て…その中で、パッと思いついて、でもあまりにもバカバカしいから言うのをためらったんだけど、でも言わなくちゃはじまらないっていうことで「目薬なんて…どうかな?」と(笑)。

「目薬を差し合ったらどうかな」と(笑)。

【布田】 「闘いようがないもので、闘ってみたらどうだろう」っていうことだったんだよね、話のテーマが。最初は「いかに2階から目薬をうまく差せるか」っていうことで、高さを重要視してた。そしたら、みっちー(熊谷康亮)がそれに乗ってきて、「フィギュアスケート的な要素を入れたらどうかな」って(笑)。

その意見が形になって『Champ! champ! Champ!』ができたんですが、出来上がった脚本を読んでみて、どうでしたか?

【布田】 自分たちが出した元ネタが、いざ脚本になったらさらにバカバカしくなってて(笑)。でも、ここまですごい脚本が出来上がるっていうのは、やっぱり脚本家である(遠藤)雄史の力が大きいですね。あのネタをこうやって形にできるのがすごいなと。偉いよね、ほんと。

一方、貴樹さんは今回が初舞台ですが…。

【及川】 毎日楽しく稽古しております。

貴樹さんの役どころは?

【及川】 布田さんのコーチ的な感じの役です。布田さんたちをあたたかく見守ってる感じがしますね。稽古しながら、ずっと頭の中にはアニマル浜口のイメージがあるんですが(笑)。アニマル浜口&ラッシャー木村ってかんじですかね、なんとなく(笑)。

では、貴樹さんがこの作品を通して、お客様に伝えたいことは?

【及川】 なんか、こう…バカバカしいことをバカバカしく、でも一生懸命やれるっていうのは素晴らしいことなんじゃないかなって。普段仕事をしてても思うんですけど、自分がバカになれないとなかなかうまくいかないことって、けっこうあるんですよ。「仕事ってそういうものなのかな、バカになれるほど情熱を注がないとうまくいかないものなんじゃないかな」っていう思いがあるので、バカバカしいことを一生懸命やることの素晴らしさを伝えたいなぁと。

【布田】 今回は3部作のひとつ『Champ! champ! Champ!』についていろいろ喋りましたけど、今回の『Rush! rush! Rush!』という作品は本当に、いろんなTCTの一面が見られる芝居だと思います。ぜひ多くの方に足を運んでいただいて、もっともっとTCTの良さを知ってもらえればと思います。ぜひ観に来てください、よろしくお願いします!

【及川】 アクションあり、笑いあり、涙あり。僕自身がどんどんTCTを好きになっていくような作品です。皆さんぜひ観に来ていただければと思います。新しい及川貴樹をお見せできる気がします。

同い年だし、フレンドリーに呼び合いたい(笑)。

さて、ここで布田さんから、同い年の貴樹さんに何かお話があるということですが…。

【布田】 はい。えっと、普段みんな及川くんのことを『及川くん』って読んでるけど…呼び名が長いよな、って思って。ということで、同い年だし、俺は及川くんを『貴樹』と呼びたい!で俺のことは『布田』と呼んでほしい!

【及川】 あ、はい。

【布田】 じゃあ、今を境に…。

布田さんは『智章』って呼んでもらわなくてもいいんですか?

【布田】 だって、誰も『智章』って呼ばないし(笑)。

じゃお互い、試しに、呼んでみてください。

【布田】 貴樹、よろしく!

【及川】 布田、よろしく(笑)。

…なんか、ぎこちないですねぇ。

【布田】 そりゃそうだよ(笑)。

【及川】 そりゃそうですよ(笑)。

【布田】 ふだん、友達とかに『貴樹』って呼ばれる?

【及川】 高校ぐらいまでは呼ばれましたね。大学に入ったら、変なあだ名がついちゃって…。

【布田】 どんな?

【及川】 『おとう』って呼ばれてたんです。見た目がお父さんぽかったんで。あ、別に子供がいたとかそういうわけじゃないですけど。

【布田】 今でも?

【及川】 大学のときの友達はそう呼びますね。けっこう恥ずかしいですよ、駅とか人がたくさんいる中で後輩とかに「おとうさん!」って呼ばれるの(笑)。

【布田】 後輩は『さん』をつけるんだ(笑)。

【及川】 『おとうさん』って言われると、周りの人が凄い目で見るんですよ。「お、お父さん!?」って。

じゃあ、TCTでは何て呼ばれたい?

【及川】 『貴樹』で全然いいですよ。

じゃあ今日からはフレンドリーに喋るということで…じゃあここで早速、タメ語で喋る練習しましょうか。

【布田】 じゃあ…。けっこうTCTの人って、

【及川】 はい。…「はい」って言っちゃだめだ(笑)、うん。

【布田】 声優さんに憧れて芝居を始めた人が多いんだけど…貴樹は…どう?

【及川】 アニメ?アニメは…トランスフォーマーとかそのへんですかね…いや、そのへんじゃない?(笑)あと『AKIRA』かな。飲み込まれていくシーンがあるんですけど……いや、ある…のよね(笑)。

【布田】 オネエ言葉になった(笑)。

【及川】 敬語を使うまいとして、ついオネエ言葉に(笑)。いやー、なんかね…大丈夫、そのうち態度でかくなってくるから。あのね、僕、すんごい人見知りする…のよ(笑)。

【布田】 またオネエ言葉になった(笑)。

【及川】 座り方とかも、なんかついついオネエ座りになったりとかして。みんなから「あやしい」って言われて、こういうキャラはやめよう、やめようと思ってるんだけど。

【布田】 そのうち、オカマバーのママの役とかが来そうだね。

この対談の間に、貴樹さんのいろんなことが丸裸になりましたね。

【布田】 いやー、よかったよかった。

【及川】 これからは男らしくしよう…(笑)。

inserted by FC2 system